コンピュータのプログラムなど、知的な創作活動から生産された「知的財産」には、創作した人の利益を一定期間保護する権利「知的財産権」が与えられます。ここでは、その「知的財産権」についてみていきます。
知的財産権の種類
「知的財産権」は以下のように、3つに大別できます。
(1)産業財産権
(2)著作権
(3)その他
(1)産業財産権
「産業財産権」はさらに、以下の4つに分けられます。
(ⅰ)特許権:「発明」など、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの。保護期間は出願から20年。
・発明:「この世になかったものを初めて作り出すこと」です。一方で、ただ見つけることは「発見」ですね。ですから、アメリカ大陸を「発見」しても特許権は得られません。「フィラメントに電流を流すと発光する」という発見を利用して「電球」を発明すれば、特許権の対象になってきますね。
・自然法則:「万有引力の法則」や「エネルギー保存の法則」などです。ある「経済法則」やある生物の「行動法則」などは含まれません。
・技術的思想:技術的課題を解決するための技術的手段であって繰り返し利用でき、伝達できる思想です。よって、誰もが使用できる思想とも言えます。そのため職人などが経験により得た技能などは個人に属するもので、誰もが使用できるものとは言えませんので、ここでは該当しません。画家が描く画法なども該当しませんね。また、思想であるので特許権は必ずしも産業化されている必要はありません。
・高度なもの:これは、「簡単に作り出せないもの」とも言い換えできますが、主には、高度という言葉を使って、実用新案の「考案」と区別しています。
(ⅱ)実用新案件:自然法則を利用した技術的思想の創作のうち物品の形状、構造などの考案。保護期間は出願から10年。
・実用新案権では、物品についての考案でなければなりません。つまり、製造方法などは「実用新案権」には含まれず「特許権」に含まれます。
・考案:「特許権」では高度性が要求されていましたが、「実用新案権」のこの考案ではそれは求められていません。
(ⅲ)意匠権:物品の形状や模様、色彩などの資格を通じて美感を起こさせる斬新なデザインなど。保護期間は出願から25年。
(ⅳ)商標権:自分が取り扱う商品やサービスと、他人が取り扱う商品やサービスとを区別するためのマークなど。保護期間は登録から10年で、この「商標権」のみ更新が可能である。
上記の権利の保護期間の開始時期は、「出願」または「登録」から です。よって、発明したりマークを作成した時点では、これらの権利は発生しません。ですので、これらの権利は「特許庁」が所轄しているので、そこに自らが出願し認めてもらわなければまりません。これを「方式主義」と呼びます。
(2)著作権
著作権は、「著作人格権」と「著作権(財産権)」に大別され、さらにそれぞれが細かく権利として定められています。以下にそれらを示します。
●著作人格権
・公表権:著作物を公表するかどうかを決定する権利
・氏名表示権:著作物に著作者名を表示するかどうか、表示する場合に実名にするか変名にするかを決める権利
・同一性保持権:著作物の内容などを著作者の意に反して改変されない権利
●著作権(財産権)
・複製権:著作物を印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に複製する権利
・上演権・演奏権・上映権:著作物を公に上演、演奏、上映する権利
・公衆送信件:著作物を公衆送信し、あるいは、公衆送信された著作物を公に伝達する権利
・口述件:著作物を口頭で公に伝える権利
・展示権:美術の著作物または未発行の写真の著作物を現作品により公に展示する権利
・頒布件:映画の著作物をその複製物の譲渡または貸与により公衆に提供する権利
・譲渡権・貸与権:映画以外の著作物をその原作品または複製物の譲渡、貸与により公衆に提供する権利
・翻訳権・翻案権:著作物を翻訳・編曲・変形・脚色・映画化・その他翻案する権利
・二次的著作物の利用に関する権利:翻訳物、翻案物などの二次的著作物を利用する権利
※「著作人格権」は、著作者の死亡によって原則的には消滅します。よって、この権利を譲渡や相続することはできません。
一方で「著作権(財産権)」は、財産ですので、譲渡や相続をすることができます。また、この権利の保護期間は、著作者の死後(映画の場合は公開した翌年)から70年間です(死亡または公開した翌年の1月1日からを起算日とします)。
●著作隣接権
この権利は、著作物の公衆への伝達に重要な役割を果たしている者に与えられる権利です。例えば、他の著作者の楽曲などをオーケストラ等が演奏した場合、その演奏を行なった時点でこの「著作隣接権」が発生します。
ですので、「CDに録音されている音楽をコピーする場合」、著作物(歌詞・楽曲)のほか、アーティスト等の演奏・歌唱、レコード(ここではCDなどの媒体を問わず、 「音が固定されたもの」を意味します)が関係するため、著作権と著作隣接権が重層的に働くことになります。
著作権の例外
著作権は、以下のような「公正な利用」と考えられる場合に限り、例外的に著作権者などの許諾を得ることなく利用できることが定められています。
・私的使用のための複製:家庭内で仕事以外の目的の場合
・図書館などにおける複製:公立図書館などの政令で定められた図書館で、営利目的でない場合
・引用:公正な慣例に合致し、正当な範囲内であることを条件とし、自分の著作物に他人の著作物を引用して利用できる
・教科用図書などへの掲載:学校教育の目的上必要とされる限度で教科書に掲載することができる
・学校教育番組の放送:学校教育の目的上必要と認められる限度で学校教育番組において著作物を放送することができる
・教育機関における複製:授業の過程で使用するために著作物を複製できる
・試験問題としての複製:入学試験などの問題として著作物を複製できる
・障がい者などのための複製:障がい者のために点字や字幕などの方法によって複製できる
・営利を目的としない上演など:営利を目的とせず、観客から料金をとらない場合は、公表された著作物を上演・演奏・上映・口述できる
・時事問題に関する論説の転載:新聞、雑誌の時事問題に関する論説は、利用を禁ずる旨の表示がない限り、ほかの新聞、雑誌に掲載などができる
・情報解析のための複製など:コンピュータなどによる情報解析を目的とする場合、必要な限度内で、記録媒体に著作物を複製できる